天台宗の葬儀の特徴について

天台宗の葬儀

伝教大師最澄による法華経を基盤とする宗派

天台宗は、奈良仏教が終わり平安時代から鎌倉時代にかけて数多く仏教の宗派が登場した時代に、それらの教えの基盤となった非常に歴史の長い宗派です。

分類としては真言宗と同じ密教となっており、大乗仏教の一宗派として中国の僧である天台大師智顗が大成させたものであることから「天台宗」という名称が冠されています。

智顗(ちぎ)は本格的に経典をまとめ「法華経」を究極の教えとする教学を開いた人物であり、奈良時代に日本に経典が用いられた時には鎮護国家のために諸寺に収められ、官僧の資格教養として用いられてきました。

最澄はこの法華経を東大寺で受戒してのち、歴史上大きな影響をもたらすことになる比叡山で草庵を作り山林修行に入ります。

このとき作られた草庵は延暦寺根本中堂であり、その後も数多く登場してくる宗派の開祖たちの修業の場となります。

比叡山では法華経の他に浄土教も盛んに修行をされていきましたが、最澄が選んだのは法華経です。

教えの基本は「法華一乗」というもので、他の宗派の教えも人々にとって救いの手(方便)になるとしながらも、最終的には法華経に導かれていくとう立場を取りました。

同時期にできた真言宗は密教の色が濃いですが、天台宗は顕教と密教の2つの考え方を同時に併せ持っているところに大きな特徴があります。

座禅や念仏、読経といったことをすることで救われる大乗仏教でありつつ、加持祈祷での修行による自力本願という密教らしい教えもしています。

こうした現存する宗派の中でも複数の特徴を見ることができるのが、総合仏教である天台宗の最大の特徴と言えるでしょう。

5つの式次第と焼香

天台宗の葬儀の式次第は、剃度式・誦経式・引導式・行列式・三昧式という5つの流れで構成されています。
これらは人が出家をして悟りを開き、法語を与えられ極楽浄土へと導かれるという一連の流れを一つの式として組み込んだものです。

この式の最後に参列者で法華経を唱えることにより心安らかに仏のもとへ旅立つことができるとしています。

とはいえ現在ではこれらの式の流れは儀礼的に行われることになっているので、特に参列者が積極的に何かをしなければいけないということはありません。

葬儀において導師に読まれるのは「光明真言」が一般的で、古代インド文字によって書かれた経が詠唱されるということで他の葬儀とは異なる印象となります。

焼香においては「三」という数字が意識されており、右手三本の指で抹香をつまみ額の高さに押しいただきます。
このとき額につけて押しいだかなくても、額の高さにまで掲げればそれでよいとされています。

回数は1回または3回となっていますが、真言宗同様仏・法・僧の三宝を敬い、三毒を払うということで「三」という数字が強く意識されているのです。