絶対他力を提唱した浄土真宗
浄土真宗は、浄土宗の開祖である法然の弟子であった親鸞によって開かれた宗派です。
親鸞が浄土真宗で提唱したのは絶対的な「他力本願」で、「南無阿弥陀仏」という経を唱えることで、慈悲深い阿弥陀如来によって極楽浄土に迎え入れてもらえるとしています。
これが他の宗派との大きな違いとなっており、浄土真宗の葬儀においては供養は目的となっていません。
というのも絶対的な他力本願の思想においては、人が亡くなった時に祈りを捧げるのは故人本人ではなく阿弥陀如来となるからです。
他の宗派においては極楽浄土への道は自分で向かうものですが、他力本願では全ての人が阿弥陀如来の慈悲によって亡くなってすぐに仏のもとに召されることができますので、故人に祈りを捧げる必要はないのです。
そのため他の宗派にあるような「引導」や「授戒」といった儀式がありません。
葬儀の時には清めの塩や死に装束を用いることもはなく、弔電や弔事において「お祈り」「冥福」「草葉の影」といった言葉も用いられません。
ただ浄土真宗は日本国内でも非常に多くの宗派のある大きな団体であることから、それぞれの場所によって祭壇やお供え物などに違いが見られます。
特に浄土真宗で大きな宗派となっているのが「浄土真宗本願寺派(お西)」と「真宗大谷派(お東)」の2つで、仏壇や法具などに大きな違いがあります。
その他にも浄土真宗には「真宗高田派」など小さな派もいくつかあるので、参列をする時にはどの宗派によるかということもチェックしておくほうがよいでしょう。
お線香は立てずに焼香をするのが浄土真宗
葬儀に参列をするときには、それぞれの宗派の基本的な思想を理解しておくことは非常に大切です。
というのも、一見ただ異なる儀式をしているかのように見える仏式の葬儀も、意味がわかって見てみるとそれがどうしてそのような作法になるかが理解できるからです。
根本的な思想が理解できていることで自然とマナーを守ることができるようになります。
特に浄土真宗のように特殊な儀礼が多い宗教においては少しでも気にしておいて貰いたいです。
浄土真宗に共通する大きな特徴に、焼香をするときに線香を立てないということがあります。
これは先にも述べたように、葬儀において祈りを捧げるのは故人ではなく阿弥陀如来であることが由来です。
線香は香炉に立てずに横に寝かせて使用をし、焼香をするときには抹香を額にいただくことはなく、そのまま焚くという方法がとられます。
このとき本願寺派は1回、大谷派2回と微妙な違いがあったりします。
自宅の仏壇においても、本願寺派は総金の内容となっているのに対し、大谷派は柱黒のやや落ち着いた雰囲気をしています。