空海を開祖とする密教の宗派
真言宗は奈良仏教に代わり、一般庶民のための仏教として登場した長い歴史を持った宗派です。
開祖は弘法大師空海で、唐の国に渡ったのちに長安の都で密教の法流を継承し、それを日本に持ち帰って「真言密教」の教えを作りました。
現在においても「密教」というのは他の仏教の宗派と大きく流れを異ならせており、のちに主流となる浄土宗や浄土真宗のような「他力本願」と異なる「自力本願」を教えの基本としています。
「密教」とは文字通り「秘密の教え」のことであり、書物や言葉で伝えることができることばかりが仏教の教えではないという立場を取っています。
なお「以心伝心」という言葉は仏教用語であり、こうした密教の言葉以外の方法で教えを伝えるということが語源です。
他の仏教の教えと異なり、真言宗においては古代インド文字であるサンスクリット語による独特の経を唱えます。
「光明真言」や「般若心経」と言われるもので、特に「光明真言」は漢字ではなく梵字によって書かれており、発音も大きく異なるものです。
「光明真言」は真言宗の他にも天台宗で用いられており、葬儀や法要の際に唱えることで死者の罪は消滅し極楽往生が約束されるという意味を持っています。
真言宗の祖は高野山金剛峯寺にあり、その後壮大な体系を持つ秘密仏教として全国に多くの宗派が出来ました。
そのため同じ真言宗でも葬儀の方式が大きく異なるということも多く、「光明真言」の他「舎利礼文」や「陀羅尼」といったものが唱えられることがあります。
最大の特徴となっている「灌頂(かんじょう)」
真言宗の葬儀における最大の特徴は「灌頂」という頭に水をかける儀式です。
これは仏教の教えの中で菩薩が最後の悟りを開いた時に、智水を頭からかけられたことで成仏をしたということから来たものです。
灌頂は真言宗の他に天台宗などの密教では広く行われているもので、戒名を受けたときの「受戒」や、修行者が一つの区切りを終えたときなどに登場します。
実際の葬儀の式においては水をかけるのではなく「加持香水の法」として行われます。
真言宗における「自力本願」では、経を唱えたり修行をしたりすることで自らの力で仏になることを目指すこととなっているので、葬儀においては「南無大師遍照金剛」という「ご宝号」が唱えられます。
「南無大師遍照金剛」の意味は「弘法大師様にお仕えいたします」ということで、これを唱えることで成仏をすることができるとしています。
焼香の回数は三回で、お香を右手の三本の指を使って額の高さでいただきます。
この「三回」というのも真言宗の大きな特徴で、仏・法・僧の三宝を敬うとともに、仏教における三毒を払うことができるとしているのです。